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克洋とは?/ ディック

[ 475] 松岡正剛の千夜千冊『AKIRA』大友克洋
[引用サイト]  http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0800.html

物語は、金田と島鉄雄と山形たちの暴走族が、クラウンという別派の暴走族と道路上の戦闘を真剣きわまりない“たけくらべ”を繰り広げていること、そこにはたえずポール・ヴィリリオの事故がおこって、そのたびに得体の知れない革命ゲリラ組織やエスパーたちが関与してくること、どこかにすべてのシナリオを動かそうとする“装置”があるらしいこと、これだけの条件の描写で、事態が激越に加速するだけなのだ。
さきほどもちょっと書いたが、アキラ的なる異様な増殖と破壊の力に対抗するのは、結局は「国家と金田」なのである。これは本来ならまったくおかしなことで、これだけ終末めいた緊急事態がおこっているのに、それに対処しようとしているのが抽象的な国家と、そしてあまりに具体的な金田だというのは、まるで説得力がない。ふつうならば、そのあいだにいろいろな組織と制度と民衆とがいるはずだ。そのほうが物語としても説得力が出ると思いたくなろうし、ハリウッド映画だってたいていはそこに裏切りや齟齬がおこることを描いてきたものだ。
それがディズニーランドや六本木ヒルズで満足ならば、それはそれでいい。しかし紫煙渦巻く春木屋や新しいセッションばかりが繰り広げられるピットインでなくては遊べない者や、オートバイが雲霞のごとく蝟集し、そこに「第六禅天魔」という幟(のぼり)がはためかないと遊んだ気にならない者もいるのであって、そういう無政府的遊戯をことごとく排除して、毒気のないスキー場や順番待ちのよさこいソーランを用意したりしていたのでは、これは必ず押井守や大友克洋や庵野秀明の反撃を浴びることになる。アーシュラ・K・ル・グィンのゲド戦記は楽しめない。
実際にも、いま大友が準備しつつあるアニメ作品『スチームボーイ』は商業社会の条件にあわなくて、かれこれ8年近い頓挫を余儀なくされた(この秋にやっとリリースされるはずだったが、今朝の「日刊スポーツ」に来春まで延びると報道されていた)。これは押井守の『GARUM』も同じこと、ぼくはそのプロトタイプ版を六本木のライブハウス「ヴェルファーレ」で発表してもらったのだが、やはり商業状況から突き落とされて、以来8年近くの中断になっている。まあ、このことはここではこの程度にしておくが、押井や大友の表現世界をどのように評価し、これを享受できるかということは、実際には社会と産業の仕組みの対決とともにあるわけなのだ。
しかし監視を逃れたい者もいる。チンピラならば金田や鉄雄や山形である。宗教団体なら新興宗教のミヤコ婆さんである。そもそも実在さえ疑わしいエスパーたちは監視そのものの埒外に蠢いている。このほかにたとえば、悪徳弁護士、脱税者、それに本当の正義を発揮したい者たちも監視の対象になる。本当の正義など、あるかどうかはわからないが、少なくともそのように主張されるばあいは、必ず国家や社会とぶつかることになる。

 

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